コスゲストーリー

kosuge

小菅 (こすげ)さんの家では、 去年チワワをお迎えしました。
名前はナッツ。
薄茶のアーモンド色だったので、飼い主のパパが名づけました。
小菅家はマンション暮らし。
いつも遊んでくれるパパと、 優しく撫でてくれるママとの2人と1匹で暮らしています。

ナッツはいつも元気一杯。
でも、たまに元気がなくなってしまいます。
それはお留守番のとき。
大好きなパパとママがお仕事の時、 お買い物へ行ってしまう時、
ナッツは一人でお留守番しなければいけません。
ナッツはお留守番がとても嫌い。
シーンとした部屋はさびしくて、悲しくて
一人の時間はいつもよりずーっと長く感じます。
「一人にしないで!」「一緒につれて!」
ドアを出ようとするパパとママに一生懸命叫びました。 でも、そのたびにパパやママは悲しい顔をします。 ナッツはだんだん、 自分が嫌になってしまいました。 一人でいると、 食欲もありません。
遊ぶ気持ちにもなれません。

今日も、ナッツはサークルの中でお留守番です。
ナッツはベッドの上でうずくまり、じっとしていました。
まだかな、 まだかなと思いながらずっとドアを見つめています。

さっき叫んだ時の、パパとママの悲しい顔が浮かびます。

「もしかしてパパとママに嫌われたのかもしれない・・・」
「もし、パパとママが帰ってこなくて、 このままずーっと一人だったらどうしよう!」
そう考えると、ちょっと涙がでてきました。

「どうして泣いてるの?」そのとき、サークルの隅から声がしました。
見ると、そこには見たことのない人形が立っています。

それは昨日、元気のないナッツを心配して、ママが縫ってくれた犬の人形でした。
まん丸なしっぽ、 ちぐはぐな長さの手足。ちょっと不格好でしたが、大きな口はニコニコと笑っています。

「ぼくはコスゲ! 一緒にあそぼうよ!」

ナッツは驚いて、 怖くなってコスゲにガブッと噛み付いてしまいました。
噛み付いた瞬間「ブビーー!!」 っと変な音が鳴りました。
ナッツはびっくりして、 そして笑ってしまいました。 それからナッツとコスゲはたくさん遊びました。 ガブガブッと噛んでも、放り投げても、ふんずけても、 コスゲはニコニコと笑って遊んでくれました。
ふとナッツが気がつくと、 パパとママが笑顔でこちらを見ていました。 遊びつかれて、コスゲを枕にして眠ってしまっていたのです。 「今日のお留守番、 あっというまだったよ! コスゲと遊んだよ!」 ナッツは笑顔で飛び跳ねました。
パパとママも嬉しそう。 それを見て、ナッツはもっと嬉しくなりました。 コスゲも黙って、ニコニコと笑っていました。

それから15年後・・・、
ナッツは静かに虹の橋をわたりました。
シーンと静かになったサークル。
残されたコスゲは、一人で、 そっと家を出ました。
涙がこぼれそうになったけど、 ナッツの笑顔を思い出しました。
「どうして泣いてるの?」 とナッツの声が聞こえてくるような気がしました。
そうだ、
仔犬のときのナッツのように、悲しんでいるワンコを助けたい!
もっとワンコの笑顔を増やしたい!
ワンコの幸せのために、ぼくは作られたのだから···
コスゲのココロに、 熱い情熱が芽生えたのでした。

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